ご自宅のお風呂で「滑ってしまわないか」「浴槽から立ち上がるときによろけないか」など、不安を抱えていませんか。とくに高齢の方や小さなお子さんがいるご家庭では、お風呂での転倒は大きなけがにつながる恐れがあるため、十分な注意が必要です。とはいえ、どのような対策をとれば安全性が高まるのか、具体的にイメージしづらい方もいらっしゃるかもしれません。本記事では、手すりの導入をはじめとした対策のポイントを六つにわけてご紹介します。大掛かりな工事ではなくても、ちょっとした工夫で家族みんなが安心して入浴できる空間に近づけることは十分に可能です。
お風呂での転倒リスクとは?
お風呂は、家の中でもとくに転倒しやすい場所といわれています。その原因の一つは「床が濡れて滑りやすい」という点です。石けんやシャンプーなどが床についたままだと摩擦が小さくなり、足を踏み出した瞬間に滑ってしまうケースが少なくありません。さらに、浴槽から上がる際や洗い場で立ち上がるときなど、足元に力が入らない状態でバランスを崩しやすくなることも大きな要因です。
また、お風呂に入っているときは、体が温まって血行が良くなる反面、急に立ち上がると血圧が変動しやすく、目まいや立ちくらみを起こしてしまうことがあります。高齢の方や体力が落ちている方は特に注意が必要です。さらに、入浴中は意外と視界も悪くなりがちで、湯気や照明の明るさによって床面の状況が見にくいこともあります。
こうした要因が重なると、思わぬ転倒事故につながってしまう恐れがあります。しかし、原因を知り、それぞれに応じた対策をとることで、リスクをぐんと下げることができます。その代表的な方法が手すりの設置です。手すりがあることで体の支えを得やすくなり、ふとバランスを崩したときにも踏ん張りやすくなるでしょう。
手すりを設置するメリットを知ろう
手すりを取り付けると聞くと、「高齢者向けのイメージがある」「ちょっと大げさかもしれない」と考える方もいるかもしれません。しかし実際には、小さなお子さんや妊娠中の方、さらには筋力が低下しやすい方など、幅広い世代の方にとって有効なサポートになります。
入浴時は立ったり座ったりといった動作を繰り返すため、膝や腰に負担がかかることが多いです。手すりがあると、その負担を手で分散できるので、スムーズに体勢を変えられます。また、入浴中に何らかの理由で立ちくらみやめまいを起こした場合でも、手すりをつかむことで倒れ込みを防げる可能性があります。
さらに、手すりの有無は心理的な安心感にも大きく影響します。「もし転びそうになっても、ここをつかめば大丈夫」と思えるだけで、入浴時の不安が軽減されるでしょう。お風呂でリラックスしたいはずが、いつ転ぶかと緊張していては本末転倒です。手すりの設置によって得られる「大丈夫」という気持ちは、入浴時の楽しみを守るための大切な要素でもあるのです。
手すりを選ぶときのチェックリスト
手すりを選ぶ際にまず確認したいのは、「形状」と「長さ」です。お風呂での使用を想定しているなら、握りやすい丸みを帯びたものや、疲れにくい直径の手すりが適しています。長さは、実際に浴槽から出入りするときや、立ち上がるときに使う場面をイメージしながら決めると、必要以上に長すぎたり短すぎたりする失敗を防ぎやすくなります。
次に注目したいのが、「耐久性」と「防錆加工」の有無です。湿気の多い浴室では金属部分が錆びやすいため、防錆処理が施された製品や、ステンレスなど錆びにくい素材を選ぶことが肝心です。また、取っ手の表面に特殊な加工がされているタイプや、握り部分が滑りにくい素材になっているタイプは、より安心して使えます。
取り付けの際には、壁の強度や下地材の有無も確認が必要です。下地がしっかりしていない場所に取り付けると、手すりが外れて転倒を招く恐れがあります。浴槽周りや洗い場など、使用頻度が高いところへ設置する場合は、特に十分な下地補強が必要です。これらのチェック項目を意識することで、日々の入浴がより安全で快適になるはずです。
取り付け場所と設置方法の基本ポイント
実際に手すりを取り付けるときは、「どの位置に、どんな角度で付けるか」が大切になります。たとえば、浴槽の出入り口付近に縦向きの手すりを取り付けると、またぎやすくなるだけでなく、浴槽から上がる際にもしっかり体を支えられます。また、洗い場近くに横向きの手すりを設置すると、立ち上がる際にスムーズに体重を預けられて便利です。
取り付ける高さは、実際に使う方の身長や体格に合わせて調整するのが理想です。あまり高すぎると力を入れにくく、低すぎると腰や膝に負担が残りやすいので、動作しやすい位置をイメージしながら取り付けることが大切です。実際に浴槽や椅子に腰掛けてみて、「ここにあれば体を支えやすい」という感覚を大切にすると失敗を減らせます。
なお、施工方法についてはご自身でできる簡単なものもありますが、壁の強度が不安な場合や、より確実な取り付けを希望する場合は専門の業者に依頼したほうが安心です。必要な下地の補強や防水加工などをしっかり行うことで、長期間にわたって安全に使い続けられるお風呂を実現できるでしょう。
安全性向上に役立つ周辺アイテムの紹介
手すりを取り付けるだけでも大きな安心感が得られますが、さらに安全性を高めたい方は、他のアイテムにも目を向けてみるとよいでしょう。たとえば、床に敷く「防滑マット」は、濡れている状態でも足裏が滑りにくくなるので、転倒リスクを減らすのに役立ちます。取り外して洗えるタイプを選べば、お掃除も気軽にできて衛生面でも安心です。
また、椅子や腰かけ台を設置して、体を洗うときや浴槽の出入りの際に無理なく動作できるようにするのも効果的です。浴槽のふちが高く感じる方は、踏み台を利用するだけでずいぶんと負担が軽減されます。ただし、これらのアイテムも設置が不安定だと転倒を助長してしまうことがあるため、滑り止め加工などの安全性をしっかり確認してください。
照明の明るさや配置を見直すことも大切です。お風呂内に影ができて床面の状態が分かりにくいと、それだけで小さな段差や滑りやすい場所が見えにくくなります。足元を照らす照明や、湯気で曇りにくいタイプの照明を導入すれば、より安心して入浴できるでしょう。こうしたさまざまな工夫を組み合わせることで、お風呂での転倒リスクをさらに低減できます。
家族みんなが安心して使えるお風呂を目指すには
手すりの設置や床の防滑対策などを通じて、お風呂を安全にする方法はさまざまありますが、最終的に大事なのは「使う人が本当に安心を感じられるかどうか」です。家族構成や体力、生活スタイルは一人ひとり違います。例えば高齢の方には手すりの高さや位置が重要かもしれませんし、小さなお子さんには段差の少ない配置や、足元をしっかり照らす照明が役立つでしょう。
もしご家族の中に「今はまだ不自由がない」という方がいても、将来的に体力が落ちたり、病気やけがをしたりする可能性は誰にでもあります。早めに安全性を高めておくことで、万一のときにも落ち着いて対処できるお風呂づくりにつながります。
また、入浴前後の水分補給や、急激な温度変化を避けるようにすることも意識しておきたいポイントです。浴室の環境だけでなく、入浴前後の行動にも気を配ることで、より事故を防ぎやすくなるでしょう。家族みんなの暮らしを考えながら、使う人に合わせて最適な環境を整えることで、安心と快適さを兼ね備えたお風呂が実現できるはずです。
まとめ
お風呂は、日々の疲れを癒す大切な場所である一方で、滑りやすくバランスを崩しやすいという危険も潜んでいます。手すりの設置や床の防滑対策、椅子の導入など、ほんの少しの工夫で転倒リスクを大きく減らすことができます。家族が増えたり体力に変化があっても、安心して入浴できるように環境を整えておけば、みんなで快適なバスタイムを楽しめるでしょう。将来を見据えた住まいづくりの一環として、ぜひお風呂の安全対策を検討してみてください。

